アカデミックキャリアのすすめ

現場で使える
リサーチエビデンスは
現場からしか得られない。

「現場ですぐに使えるエビデンスはほしい。でも、自分は診療で忙しいので、誰か他の研究者に研究してもらい、その結果だけ教えてほしい」と考えていませんか。 確かにEBMが普及し多くのリサーチエビデンスが発信されるようになっていますが、そのほとんどは専門病院などの特殊な環境で実施されていることが多く、そのまま地域医療の現場で適用するのは難しいことが多いのです。 地域医療の現場で利用できるリサーチエビデンスは、地域医療の現場から発信する必要があります。つまり、現場にいるからこそ感じる日常の疑問をもとに、診療で活用することを念頭に置いたアウトカムを設定し、実際の現場をフィールドとした研究を進めていく必要があります。これは、現場にいる人にしかできない仕事であり、プライマリ・ケア領域の診療の質を向上させるためには、プライマリ・ケア医が臨床研究に取り組む必要があるのです。

研究を学ぶことは
臨床能力を深めることにつながります。

リサーチクエスチョンをもとに、先行研究を集め、研究デザインを考え、プロトコルを作成し、倫理委員会の審査を受け、フィールドと予算を確保し、データを収集し、統計解析を行い、論文を執筆して投稿し、査読を受けるという一連のプロセスは決して楽な道のりではありません。

しかし、この研究のプロセスを経験するなかで、科学的・論理的に捉える姿勢、文献検索や情報収集能力、情報を批判的に吟味する能力が格段にアップします。EBM(Evidence-based Medicine)は、常に最新・最善のエビデンスに基づく最良の医療を提供することを意味する言葉ですが、これを実践するために最適のトレーニング方法は、「自分で研究をやってみること」です。すなわち、研究能力を高めることは、目の前の患者さんに最善の医療を提供できる臨床能力を深めることにつながっているのです。

臨床を続けながらでも
研究できます。

研究というと、臨床を離れ、大学で夜遅くまで実験室にこもり、ネズミや試験管を相手に格闘する――というイメージがあるかもしれませんが、私たちが行っている研究のほとんどは、日頃皆さんが働いている地域の現場が研究のフィールドですので、臨床を続けながらでも、研究を学ぶことができます。